学生の皆さんにとっては、社会に出て本格的に活躍するようになるのは数年後〜10年後くらいでしょう。ですから、当然今の興味も大事にする一方、一歩二歩と先を見据えた専攻選びも重要となります。このシリーズでは、日本ではまだ十分に注目されていない一方、アメリカでは各大学が強化している専攻分野を取り上げていきます。


最近、人が乗らない飛行機「ドローン」が、さまざまな場所で利用されるようになっています。通常、UAS(Unmanned Aircraft Systems)とも呼ばれるこの技術は、写真や映像の撮影だけでなく、農業、森林、防災、イベントの運営など、多くの分野で活用されています。

こんなドローンについて、大学で専門的に学べる学科があることを知っていましたか?

UAS専攻ってなに?

ドローンの実践はもちろん、どんな仕組みで飛んでいるのか? どんなもので周囲を見ているのか? などを学んでいきます。また、ドローンをより安全に利用するために法律やルールの理解も必要で、それらも授業の中でわかりやすく教えてくれます。

どんなことを学ぶの?

大学や大学院では、例えば以下のようなことが学べます。

  • ドローンを飛ばすための基本と法則
  • 飛行コースの作り方
  • 写真や動画の操作、分析
  • 未来の技術(自動飛行、AI制御など)
  • チームでの操作


UAS専攻では、単に操縦の技術を学ぶだけでなく、ドローンをゼロから設計・組み立てたり、自動飛行プログラムを作成したりと、幅広い内容を学びます。たとえば、センサーやGPSを活用して正確に飛行させる制御技術、撮影した映像やデータの処理方法、災害現場や農業などへの実用例までカバーします。さらに、複数人でのチーム操縦や、実験中のトラブル対応など、現場に即した実践力も重視されます。理論と実技の両面から深く学べる点が魅力です。

日本との違いは?

日本でも「ドローン教育」や「自動飛行技術」を教える大学や学科が増えていますが、依然として「講義の一環」として教えられることが多く、「専攻」として学べる場所は限られています。また、日本は都市部が多いためにテロ防止の観点から機体の利用や飛行空間に関する法律がとても厳しく、実験でも自由に飛ばせる場所が乏しいという弱点もあります。例えば東京都ではほとんど全域で、許可なくドローンを飛ばすことができません。
一方、米国ではドローンを実際に飛ばし、設計し、データを利用する「現場につながる学び」が充実しており、FAAなどの国家機関や商業現場との連携も濃いのが特徴です。また、学生のチームやテストプログラムなど、学びを現場で体験しやすい環境も大きなメリットです。

将来の進路は?

UASを学ぶと、こんな進路が考えられます。

  • ドローン供給企業や写真関係
  • 防災や災害検知に取り組む公的団体
  • 森林調査、農業の作業効率化
  • 安全・ロジスティクス(物流)分野

また、「FAA Part 107」という、米国でドローンを商業利用するための許可試験に合格すれば、広い分野で実際に仕事をすることもできます。

FAA Part 107とは?

Part 107は、米国の連邦航空局(FAA)が定める「商業目的でドローンを飛行させる」ためのルールです。この資格を取得すると、仕事としてドローンを操縦することが可能になります。取得には、16歳以上であること、英語を理解できること、FAA指定の知識試験(無人航空機システムの法律、安全運用、気象、空域の知識など)に合格することが求められます。試験はアメリカ国内で実施され、受験者は有効な身分証明書を提示する必要があります。資格取得後も2年ごとに更新が必要です。UAS関連の仕事に就きたい場合、留学生にとっても重要なステップになります。
また、日本においても無人航空機操縦者技能証明などの国家資格に加え、民間資格も整備されつつあり、直接米国の資格とは無関係なものの、知識や技能で共通項も多いと考えられます。

まとめ

アメリカの大学で学べるUAS専攻は、ドローンの操縦だけでなく、設計・プログラミング・自動飛行・データ解析など、幅広い専門知識が身につく実践的なプログラムです。日本では飛行が制限されがちですが、アメリカでは広大な空域や実験設備が整っており、授業や研究も実地に近い形で行われます。また、FAAの資格取得や産業分野との連携など、将来の進路にもつながる機会が多いのが特徴です。ITや工学、自然科学など他分野との相性もよく、将来性の高い学びとして注目されています。ドローンを使った仕事に興味がある人には最適な選択肢といえるでしょう。

staff

ドローンやUASは、これからの社会を支える大切な技術の一つです。
新しいチャレンジを探している人は、ぜひUAS専攻も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

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Unmanned Aircraft Systems 推奨大学

カンザス州立大学
Kansas State University


操縦から設計・研究まで、すべてを学べる本格UASプログラム

カンザス州立大学(サライナ校)は、全米でも最も早くUAS(無人航空機システム)専攻を本格導入した大学のひとつです。2009年にドローン教育の証明書プログラムを開設し、2011年には全米2校目となる学士課程としてのUAS専攻をスタート。FAA(米連邦航空局)との連携も早く、2015年には大学として初めて商用UASフライト訓練の認可(Section 333)を受けるなど、UAS教育のパイオニア的存在として注目されてきました。
現在は、「Flight & Operations(操縦・運用)」と「Design & Integration(設計・統合)」の2コースを展開。操縦コースでは、固定翼・回転翼のドローンを用いた実践的な飛行訓練を行い、FAA Part 107資格取得にも対応。設計コースでは、機体構造、センサー統合、ソフトウェア制御など、工学的なアプローチでUASを一から作り上げる力を養います。
また、同校にはApplied Aviation Research Center(AARC)が併設され、災害対応、農業、インフラ点検など多様な分野での研究が進められています。学生は授業にとどまらず、産業界や政府との連携プロジェクトにも参加できるなど、実社会と直結した学びが可能です。
UAS業界の成長とともに進化し続けるKansas State PolytechnicのUASプログラムは、操縦・設計・運用・研究といったすべての側面からドローン技術を深く学べる、全米でも屈指の教育環境を提供しています。

staff

航空学が強い大学は、UASも必然的に強いと考えて良いでしょう。カンザス州立大学では機械工学や航空整備学など関連専攻も学ぶことができます。

全米第2位にランクされる有名大学
マルチローター機の操縦訓練
整備中の固定翼型ドローン
UAS専攻の歴史や学位・認定の初導入などを紹介した公式紹介動画
固定翼型のドローンについて、学生目線で語る動画

カンザス州立大学・UAS専攻の主な講義

(各課程を押すとリストが表示されます)

学部課程

無人航空機システム入門(Introduction to Unmanned Aircraft Systems) UASの基礎知識や用語、運用目的、安全基準、法律などを包括的に学ぶ。

マルチロータ飛行演習(Multi‑rotor Flight Lab) マルチローター型UASの基本操作、飛行技能、安全な運用技術を実践的に習得する。

UAS安全基礎(UAS Safety Fundamentals) 運航上のリスク評価、障害発生時の対応、FAA規則に準じた安全運用の基本を学ぶ。

遠隔測定データ処理入門(Introduction to Processing Remotely Sensed Data) カメラやセンサーで取得した画像・熱・地形データの解析方法を学ぶ導入的な講義。

データ取得と後処理(Data Acquisition and Post‑processing) ミッションで取得したデータを整理・加工し、解析可能な形式にする技術を学ぶ。

次世代航空モビリティ(Advanced Air‑Mobility) 空飛ぶクルマや都市内輸送など、次世代型UAS技術とその応用を学ぶ。

複合材料技術(Composites) 炭素繊維や樹脂などの複合素材を用いたUAS機体の構造設計と製作技術を習得。

データ分析(Data Analytics) 飛行後に得られる各種データを分析し、有用な情報や判断材料を抽出する手法を学ぶ。

飛行試験と評価(Flight Test and Evaluation) 実験飛行を通じて、機体性能の評価や問題発見、改良につながる実務的な技術を学習。

UAS運用とミッション計画(UAS Operations and Mission Planning) 飛行経路の設計、空域の把握、ミッションごとの運用計画策定など、実務力を養う。

修士課程(大学院)

UAS専攻では修士課程は設置されておらず、より航空システム全体を取り扱う、「統合システム設計・力学専攻(Master of Science in Integrated Systems Design & Dynamics)」や航空宇宙工学から関連講義を挙げます。

  • Advanced Aircraft Certification(上級航空機認証) 各種UASや航空機の型式証明・製造承認など、認証プロセスの高度理解を習得。
  • Aviation Human Factors Analysis and Design(航空ヒューマンファクター解析と設計) 操作員の行動や認知特性に着目し、UAS安全設計に応用する学習内容。
  • Aerospace Topics(航空宇宙関連特論) 航空宇宙分野の最新テーマ(例:UAS応用や航空技術動向)について議論する演習。
  • Aerospace Manufacturing and Materials(航空材料・製造技術) 軽量・高強度の複合素材を用いたUAS製造や材料特性の応用を学ぶ。
  • Autonomous Systems Architecture Studio(自律システム構造の演習) UASを含む自律運行システムの設計思考と構成要素への体系的アプローチを体験。
  • Advanced Cybernetic Systems Development(高度サイバネティックシステム開発) UASの制御系や自律機能開発に必要なサイバネティクス理論に基づくシステム設計。
  • Autonomous Networking within Cyber‑Physical Systems(サイバーフィジカルシステムにおける自律ネットワーク) UASのセンサ・制御・通信が統合されるネットワーク構築術を習得。
  • Integrated Machine Learning and Autonomous Systems(統合型機械学習・自律システム) 機械学習を用いた状況認識や自律制御の実装技術をUASに応用する学習。
  • Electron Microscopy of Aerospace Materials(航空材料の電子顕微鏡分析) 微細構造から航空用複合材の性能評価・劣化分析などを深く理解。
  • Advanced Composite Materials(高度複合材料) UAS軽量化へ不可欠な素材開発、強度解析と製造手法に関する専門的知識。

Unmanned Aircraft Systems 専攻・関連専攻設置大学

NCN特別奨学金対象大学

  • アーカンソー大学
  • アーカンソー州立大学
  • ネブラスカ大学オマハ校 など

その他の受入大学

  • カンザス州立大学
  • アラバマ大学ハンツビル校
  • オクラホマ州立大学
  • テキサス大学アーリントン校
  • カリフォルニア州立ポリテクニック大学 など

機械工学、航空宇宙工学などの専攻でもUAS関連の学習をすることができます。


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